B型肝炎訴訟大阪期日、福岡で肝炎恒久対策会議、「落語長屋の四季の味」矢野誠一

 1月29日(金)は、大阪地裁でB型肝炎訴訟の期日であったので参加した。今回意見陳述したのは、徳島の女性(62歳)であった。弟さんは彼女と同じく肝炎で、一昨年6月に肝内胆管がんでなくなっている。彼女の二人の子どもも肝炎のキャリアで、彼女からの母子感染。集団予防接種時の注射器の使い回しが、多くの人に被害を与えている。彼女がB型肝炎ウイルスに感染していると知ったのは、長女(38歳)を妊娠したときの血液検査であった。長男(35歳)を妊娠した時に体調が悪くなり、肝臓だけでなく腎臓も悪く、即入院となった。無事に出産はしたが、彼女はしばらくの間入院した。生まれたばかりの子、まだ幼い娘(2歳半)を残しての入院は、「身を裂かれるほど辛く、このまま子どもたちに会えなかったらどうしようという不安でいっぱいの」入院であった。肝炎は当然仕事に支障が出て、50歳の時に早期退職となり、非常勤職員としての身分になった。県庁に勤めていた弟は、人間ドックで重篤な肝臓がんが見つかり約7ヶ月間の闘病生活の末、57歳で亡くなった。最初は母親からの感染と思っていたが、母親のカルテが見つかり、母親からの感染でないことがわかり、提訴することになった。
 再三このブログでも書いてきたが、彼女は、「除斥」(「不法行為による損害賠償請求権の期間の制限」第724条不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。)によって不利益を被っている。現在、B型肝炎訴訟においてこの「除斥」という不合理を改善する取組が重要な課題になっている。国が、集団予防接種時の注射器の使い回しが危険なことを承知しながら放置していた責任は重大であり、民法724条の規定を無原則的に当てはめるのは、無責任である。また、彼女の場合はたまたま母親の古いカルテが病院で見つかったので提訴に踏み切ることができたが、被害者総数45万人とも言われるB型肝炎訴訟で現在の提訴者数が3万人にも満たないことは、被害を証明しようにもカルテがないため証明できないでいる被害者が大変多く存在していることを示しているだろう。
 この日は、48歳の男性も意見陳述をした。彼も「除斥」という高い壁に阻まれている。彼は意見陳述で、「今回、私は、弁護団から『国が提案した除斥を前提とした内容で和解も可能ですが、納得されないのであれば、ご自身の希望を、裁判所に伝えて争うことも可能です。』と教えていただき、自分の希望をはっきり述べようと決意しました。私がこの病気と真剣に向き合えたたのは、平成13年に発症し、その後平成18年にウイルスが肝炎の急性増悪を引き起こし、死への恐怖を感じた時からです。」と述べている。彼が国の不当な妥協を強いる姿勢に屈しなかったのは、単に自分の為だけであるわけでなく、泣き寝入りしたならばこれから続く提訴者にもつらい思いをさせてしまうからだと考えているからに他ならない。そして彼は、「集団予防接種によるB型肝炎の感染被害の救済を目的とした制度の趣旨を全うする、あるべき救済のご判断をいただけることを私も家族も願っております。」として意見陳述を結んでいる。前回の裁判では傍聴席に少し空席もあったが、今回は満杯であった。会場に入れない人もいたようだ。裁判後の報告集会でも多くの方が参加した。
 この日我が家に着いたのは午後9時であった。
 翌日(1月30日)は博多で「「全国B型肝炎訴訟・全国恒久対策会議」が開かれた。わが家を朝6時半に出発し、JR・新幹線を乗り継いで博多についたのは11時過ぎであった。参加者は200名近くおり、今までに最高の参加者であった。昨夕、徳島に戻ってきた。
 会議の途中で、「佐賀県における肝炎対策のとりくみ」の話が佐賀大学医学部の江口有一郎教授からあった。

 グラフの通り、佐賀県は肝がんによる全国死亡率は13年間連続してワースト1位。そこからどう抜けだすか、江口先生を始め県・医師会・地域の各種団体を巻き込んだ取組が報告された。ここでは紹介しないが、経済学的手法を使った科学的な取組は、今全国の注目を集めている。徳島でも先生を招いて、職域・学域などを超えた方法が考えられてよいと思った。例えば、肝炎ウイルスの検診率の向上についても、「人を集める」ではなく「人が集まるところ」(徳島でも少し動きはあるが)。人と人との交流の輪を広げることで、新たな取組のアイディアが生まれてきたりしている。楽しく、確信の持てる話しであった。
 会議では、肝硬変・肝がんに対する医療費助成の取組、肝炎基本指針の見直しについて、厚労大臣への要求について、肝炎に対する理解を深めるための教育啓発活動、肝炎国会請願署名などについて協議された。
 次回は、4月3日(土)、新潟で行われる。

 大阪に行った時の高速バス車中で読んだ。味わいのあるいい本ですね。著者は中学生の頃から肩かばんを下げて寄席に通ったというのだから、ホンマモンである。読んでいると世知辛く生きづらい世の中が明るくなる。
 せっかくだから、本書に出てきた小咄を紹介しよう。題名は「酒の粕」。
 酒の粕をたべて赤い顔をした与太郎が「みっともねえから、ひとにきかれたら酒のんだといえ」といわれて、
 「あたい、酒のんじゃた」
 「どのくらい」
 「このくらいのをふた切れ」
 「ばか、ふた切れっていいやがる、酒の粕くらったんじゃないか。それをいうなら、これくらいの湯呑で二杯と、こういえ」
 「ヒヤは毒だぜ、燗してのんだか」
 「ううん、焼いてたべた」

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