昨日は大阪でB型肝炎訴訟傍聴、恤兵金、「兵士のアイドル」(押田信子)

 昨日(20日)は、大阪地裁でB型肝炎訴訟があったので、傍聴に参加した。今回は、残念ながら少し空席があった。それでも80名近くはいただろう。
 今回は、女性2名が意見陳述をした。原告番号3561さんは1965年生まれの51歳。87年に交通事故で入院した時にB型肝炎キャリアであることがわかった。入院中に看護師が「あの人はB型肝炎だから注意しないといけない」「早く退院してもらおう」とか言うヒソヒソ話が聞こえてきて、戸惑った。入院中母親が担当医に呼ばれて、戻ってきた母親に対して、何の話だったか聞くと、母親は軽蔑するような目で見ながら、「あんたの体は汚れてる!情けない!」と言われた。何があったか分からずとても不安になり夜中に巡回中の看護師に聞くと、看護師は「あなたはB型肝炎なの。B型肝炎は人にうつって、うつった人が死ぬのよ。あなたは死なないけれどね。ついこの前、B型肝炎の患者の手術で眼に血液が入って3ヶ月で劇症肝炎になって死んだ先生がいるねん。それで皆、あなたのことを避けているのよ。あなたが感染した原因は、性交渉しか考えられないって先生がお母さんに言っていた。」と言った。 そのことで母親の態度の意味が分かり、彼女はもう生きてはいけないのだと思い、自殺を考える様になった。
 全く身に覚えのない性交渉でのB型肝炎ウイルスの感染と医者が母親に説明したのだから、母娘の信頼関係が壊されてしまったのだ。まだまだB型肝炎について知識が普及していなかったとは言え、彼女にとっては全く受け入れることの出来ないことで、その後人に知られてはいけないという思いが強くなったと、彼女は語った。

 結婚後妊娠時に、産婦人科B型肝炎であると告げると、何軒もの産婦人科で出産受け入れを断られた。受け入れてくれた産婦人科でも、帝王切開での出産であった。もっとひどいのは、その病院でも退院時に、「本当は手術室を買い取って欲しいんやけど、それは無理やから、使った器具を全部買い取って下さい。消毒してももうあかんから。」と言われ、当時の出産費用の倍に相当する金額を支払われされている。全く、診療報酬制度にもない不当請求と言って良いものだ。
 肝炎を発症して治療にもお金がかかるようになると、夫は彼女の感染が他の男性との性交渉であると決めつけ、治療費が家計を圧迫して経済的にも苦しかったこととも重なり、彼女に暴力を振るうようになった。また、汚れた人間を他人に会わせる訳にはいかないと、自宅の一室に監禁されもした。夫の隙を見て、1歳半の娘を抱えて12月の寒空の下、裸足のまま家を逃げ出して実家に戻っている。
 このような仕打ちを多くの女性被害者が経験させられているのが、国が長い期間黙認した集団予防接種の注射器の使い回しであった。厚労省の役人は、被害者数を約45万人と推定しているが、45万人の被害者一人ひとりの顔と過酷な人生を送らされた人々を見てほしいのが、B型肝炎訴訟の意見陳述である。

 原告番号3786さんは、女性の遺族原告である。ご主人はB型肝炎による肝がんで亡くなった。最後は訪問看護や緩和ケアなどで治療を受けている。高額の治療費で貯金もなくなり、最後は娘さんの結婚費用にためてきたお金も使わざるを得なかった。彼女の娘、娘の男の子も出産後に肝炎ワクチンの予防接種している。
 原告は「このような感染防止の取り組みがなされるようになったのも、肝炎の患者さんをはじめ多くの方々の長年にわたる努力の賜物と感謝しております。」と意見陳述を終わらせた。意見陳述を聞いていると、仲の良かったご夫婦の生活が垣間見られ、その無念さも伝わっても来た。

 裁判後の報告集会で、原告番号3561さんは、提訴に至ったことについて話してくれた。たまたま受け取ったチラシに、B型肝炎訴訟のことが書いてあり、ネットなどをいろいろ調べて、B型肝炎訴訟大阪弁護団にやっとたどり着いたということであった。まだまだ、自分がB型肝炎ウイルスに感染していることを知らない人、感染原因が集団予防接種時の注射器の連続使用にあったことを知らない人がたくさんいる。広報活動の重要さが理解される意見陳述であった。

兵士のアイドル 幻の慰問雑誌に見るもうひとつの戦争

兵士のアイドル 幻の慰問雑誌に見るもうひとつの戦争

 「兵士のアイドル」(押田信子 旬報社)を読んだ。本の帯には、「アイドルを動員せよ!陸海軍慰問雑誌のグラビアには、美貌のアイドルたちの輝く笑顔が映し出されていた。原節子高峰秀子李香蘭らが 結んだ戦地と銃後の絆とは。今、明らかにされる戦争のもうひとつの真実。」と書かれている。
 戦時中には海軍では「戦線文庫」、陸軍では「陣中倶楽部」が慰問雑誌として発行されて、兵隊たちに無料で配布された。ここには多くのアイドルたち、女性たちが登場して、兵士たちの無聊を慰めた。この雑誌に出てくる兵士たちは健全で母親や妻子を大事にする、故郷思いのものばかりである。アイドルたちは自主的に、半強制的に、積極的に戦争に参加して兵士たちを慰問した。

 しかし兵士たちは、一旦厳しい戦場に出ると「三光」(殺光、焼光、略光)と言う、「殺しつくし、焼きつくし、奪いつくす」作戦を繰り広げたのであった。
 これらの雑誌は「恤兵金」(じゅっぺいきん」という、今では死語になっているお金で制作されていた。戦線文庫の奥付には「本品ハ国民ヨリ寄セラレタル熱誠ナル恤兵金ヲ以て購入シタルモノナリ」と書かれている。岩波の広辞苑には、「じゅっぺい  恤兵(恤はめぐむ意)物品または金銭を寄贈して戦地の兵士を慰めること」と説明していた。
 「戦線文庫」(1938年9月)の創刊の辞には「前線将兵を鼓舞し、時には消閑の良友となり、陣中余興大会に利用できるやうな特別配慮に編集された雑誌」と発行目的を明らかにしている。
 今、自衛隊アメリカ軍の部下となって、駆けつけ警護という名目で戦争ができるようになった。しかし、いつまでも駆けつけ警護でとどまるはずがないのが、安倍政権の実態である。
 マスコミが安倍政権のお先棒を担いで、また日本を危険な道に導こうとしている時に、この本は国民がどのようになるかを教えてくれている。

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「川柳でんでん太鼓」(田辺聖子 講談社文庫)
◯立話長うて犬も坐り換え
◯三流館夫婦仔犬を抱いてくる
◯膝の犬これが獣であるものか
◯逢うてきたうしろめたさを犬が嗅ぐ
◯水すまし思案は少し流れてみ