映画「ふたりの死刑囚」と「穂高の月」井上靖

 昨晩は、徳島弁護士会主催の映画「ふたりの死刑囚」の上映があったので連れ合いと徳島市まで行った。上映に先立って、映画「標的の島〜風かたか」のチラシ配りをさせてもらった。「標的の島〜風かたか」は、5月20日(土)に郷土文化会館で上映することになっている。監督の三上智恵さんが6月4日(日)に開かれる第57回徳島県母親大会に、記念講演の講師として沖縄から来るため、そのプレイベントである。


 昨晩の映画の主人公は、名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんと、袴田事件袴田巌さんである。奥西さんは2015年10月4日に八王子刑務所で獄死した。89歳であった。袴田さんは2014年3月27日に再審請求が認められて釈放された。現在81歳である。しかし、未だに再審は開かれていない。身分は、いまだに死刑囚で、年金もなく選挙権もない。日本国民として認められていないと言ってもよいのではないか。奥西さんは54年間、袴田さんは48年間、獄中で過ごさせられた。犯罪を犯していないものが死刑にさせられる、ことは全く耐え難い理不尽なことで、それも毎日が死と直面している。
 
 死刑囚は刑務所ではなく拘置所に留置される。他人との接触と言えば刑務官と月1回の身内との面会ぐらいしかない。いつ死刑が執行されるかは、直前にしかわからない。欧米の死刑囚への対応から見れば、全く非人道的である。
 守大助さんの冤罪事件に関わっているものとすれば、まことに日本の司法は民主的でない。検察は有罪を示す証拠しか裁判所に出さない。弁護士も検察官がどのような証拠を持っているかわからないのが、日本の裁判制度である。裁判員制度に一般人も裁判に加わることになったが、全証拠をもとに判断するのではなく、検察官が取捨選択した証拠を下に判断を下すのだから、彼らも「冤罪」に加担させられてしまう。
 ふたりとも、長い戦いの中で身内・弁護士・支援者に支えられてきたが、そうではない冤罪被害者もたくさん存在する。徳島弁護士会は、会として国に対して死刑制度の廃止を求める決定をしている。そのことが納得させられた映画であった。


 守さんも逮捕されてから16年も経過して、今は千葉刑務所にいる。検察官は、無理に犯罪者を作り上げるのではなく、手持ちの全証拠を開示する義務があると思う。

 久しぶりにというか何十年ぶりかに井上靖を読んだ。ここに登場してくる小説「氷壁」ももちろん読んでいる。調べてみると新潮社の全集に井上靖集があり、その中に入っていた。文庫本など「風林火山」「ある落日」「風と雲と砦」「春の海図」「満ちてくる潮」「北国」「大黄河 1 遥かなる河源に立つ」「西域」があった。
 彼は小説「氷壁」を書くために穂高岳に登った。登山と言ってはほとんど穂高岳であるという。山に関するエッセー50篇が収録されているが、こういう本を読むと心が和む。

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◯浮浪者のやおら全財産と起き
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 これで「川柳でんでん太鼓」は終わり。