「酒星眼回」と李白「月下独酌」
水戸の娘が私の誕生日祝いに、福島県の大和川酒造のお酒を送ってくれた。「酒星眼回」という酒の箱に漢詩が書かれていた。箱には、「『酒星』は中国の詩人・李白の漢詩に見られ、中国ではオリオン座の中央にある3つの星を、天上の中でも最高位の星として『酒星』と名づけています。」と説明していた。五言の古詩である。ネットでも調べてみたが、ここは矢張りわが恩師の松浦友久先生の登場を願わなければならない。「李白 詩と心象」(社会思想社 今はこの出版社はもうない)に載っていた。
「月下独酌」という4首連作の詩であった。其一は大変有名でネットで調べてもすぐに見つかる。
花間一壺酒 花間 一壺の酒
独酌無相親 独り酌みて相ひ親しむもの無し
しかし、この酒に関するのは、其二であった。
『月下獨酌(げっかどくしゃく)』其の二
天若不愛酒、酒星不在天。
地若不愛酒、地應無酒泉。
天地既愛酒、愛酒不愧天。
已聞清比聖、復道濁如賢。
賢聖既已飲、何必求神仙。
三杯通大道、一斗合自然。
但得酒中趣、勿為醒者傳。
天 若(も)し酒を愛せずんば
酒星(しゅせい)は天に在らじ
地 若し酒を愛せずんば
地 応(まさ)に酒泉無かるべし
天地 既に酒を愛せり
酒を愛すること天に愧(は)じず
已(すで)に聞く清は聖に比すと
復(ま)た道(い)う濁(だく)は賢(けん)の如しと
賢聖(けんせい) 既(すで)に已(すで)に飲む
何ぞ必ずしも神仙を求めんや
三杯 大道(たいどう)に通じ
一斗 自然に合(がっ)す
但(た)だ酔中(すいちゅう)の趣を得んのみ
醒者(せいしゃ)の為に伝うること勿(なか)れ
松浦先生は、以下のように解説している。
「第一首が、どちらかといえば独酌の情景に重点をおいているのに対して、第二首は、もっぱら独酌の心理を述べている。酒を飲むことの、いわば正当性と有効性の主張である。それだけに、一見、理屈めいた文脈をたてているが、そのなかに一種の、とぼけた軽み、大まじめなおかしさといったものがあり、酒のうたとしての風格を生んでいる。」
最後の4行は、酒飲みには大いに支持されるのだろう。「心のままに杯を重ねれば、心はおのずからそこに合致する。これこそ酒の楽しさ、いい知れぬ酔い心地。飲酒は、飲酒そのもののためにある。酒を飲まないやつ、酔い心地のわからないやつ、そんな連中にいって聞かせても無駄だ。よせよせ。」
さすが「詩仙」と言われた李白の詩である。
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どどいつ入門(中道風迅洞 1986年 徳間書店)
◯蝉のぬけがらつまめば割れて 夏も別れの鰯雲
◯いやと言わせぬ別れのキスに 首が折れそな二十五時
◯あんなに大きく描いた虹を 消して惜しげもない広さ
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