「風刺画で読み解く近代史」清水勲

 幕末から第二次世界大戦までの時代の様子が、風刺画で表されている。わが家の清水勲の著作は25冊。どれをとっても、その時代の世相がよくわかり、活字では得られない楽しさがある。本書では、いろんな事件・人物が登場するが、いきいきとその特徴が描かれている。
 図9では、大久保利通―死して司令(死霊)官となると題している。NHKの朝の連続ドラマ「あさが来た」にも登場して、暗殺されたことが描かれた。

 大久保は、版籍奉還廃藩置県を推進して、西郷の征韓論を批判し殖産興業につとめた。図では見にくいが、「諸官僚を指揮する大久保 ”死霊官”の馬の脚先がないのは、島田一郎ら暗殺者が、大久保の馬車の脚をを最初に切り落として止めた事実を描いている。」との解説がある。
 図17では、鹿鳴館−見せかけのショーウインドーと題して、猿の如き顔の男女を描いている。

 この絵の原題は「社交界に出入りする紳士織女」となっているが、鏡に写っている姿は猿である。来年の干支の猿から見れば、このような人物に例えられ甚だ不本意な姿であろう。
 図58では、日中戦争を象徴する風刺画と題して中国本土を踏みしめている軍人が描かれている。右目には「TERRITORIAL AIMS」(領土狙い)、左目には「DEFIANCE OF THE WORLD」(世界を無視)と書かれている。彼の着ている服には「HIS RESOURCES」(日本の資源)とある。小さな身体に大きな頭、まさに頭でっかちである。中国大陸をがむしゃらに突き進む日本軍が風刺されている。

 著者は「はじめに」の中で、「風刺画は時間を経て見直すと、歴史に関する知識・情報が加わって新しい発見をしばしばもたらしてくれる。人生を経てくると『深読み』ができるようになるのである。」と書いている。
 最近は、安倍総理の風刺画が色んな所に登場している。風刺画だけですめば問題はないが、このまま暴走を許すと大変。国民の力で止めなければならない。

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